毎日の睡眠時間は何時間が適切?すっきり起きて仕事も勉強もはかどる眠り方

理想の睡眠時間はいったい何時間なのかという疑問に、寿命や健康だけでなく仕事や勉強に必要な集中力や美容など様々な観点からお答えします。

この記事を書いている私は、メディア等でよく使われる睡眠研究がいかに一部を切り取って報道されているかについて書いた「睡眠の常識はウソだらけ」を2019年1月に出版。ありがたいことにAmazonの睡眠カテゴリで1位を獲得、☆5レビューは全体の64%(☆4以上が全体の7割以上)と、読者の皆さまから高い評価を頂戴しました。

今回は「睡眠時間は長い方が良い」「最低7時間から8時間は寝ないと健康に悪影響が及ぶ」などの通説や、理想の睡眠時間をめぐる世界中の睡眠研究が正しいものなのかを明らかにし、皆さまの睡眠時間に関する悩みを解決していきます。

定説はウソ?理想の平均睡眠時間や最低必要な睡眠時間の研究結果の実際

人間の理想の睡眠時間や、もっとも長生きする睡眠時間は、7時間だ、8時間だというニュースが頻繁に流れるようになりましたが、この数字をいったい誰がどのように導き出したのかまでは知らずに、言われたことをそのまま信じている方が多いと思います。

今や一般常識になりつつある理想の睡眠時間を、果たして鵜呑みにして良いものなのか否かを明らかにします。

スタンフォード大学が導き出した理想の睡眠時間とは

世界最先端の睡眠研究所があるスタンフォード大学で行われた実験で分かった、生理的に一番適した睡眠時間は8.2時間とのことです。

この報道を聞くと、大学の権威性も手伝って、多くの人が信じてしまい、自分はそんなに寝られていないと心配になるかもしれませんが、その必要はありません。

なぜなら最先端の研究所という名が泣くくらい、いい加減な実験によって導き出された数字だからです。

この実験は、平均睡眠時間が7.5時間の健康な10人を無理やり毎日14時間ベッドに入れたら、3週間後には平均睡眠時間が8.2時間に落ち着いたという内容です。

この実験の奇妙な点は、食事を例に考えるとわかります。毎日ビュッフェ形式で好きなだけ、食べられるだけ食べた量が生理的に一番適した食事量であるわけがないですよね。そんなことを続けたら確実に肥満になります。

睡眠も同じで、14時間も強制的にベッドに拘束された環境の中での睡眠時間が適正なものとは言えず、むしろ不健康につながると考えるのが自然です。

極めて非現実的な環境で行われた実験で導き出された8.2時間という数字は、信用できないことがお分かりいただけたと思います。

名古屋大学の研究で分かった死亡率リスクが一番低くなる睡眠時間とは

睡眠時間が7時間の人が最も長生きしたという統計データをよく目にしますが、これも残念ながら信用できません。

名古屋大学で行われた研究で、40歳から79歳の男女約10万人を、1988年から1999年まで追跡調査をし睡眠時間と死亡リスクの関係を分析したものがあります。

その結果、死亡率がもっとも低かったのは、睡眠時間が7時間(6.5時間以上7.5時間未満)で、下図のように睡眠時間がそれより短くても、長くても、綺麗に死亡リスクが増したとのことでした。

引用元:https://publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/reports/tamaa1/index.html

ここまでは有名な結果なのですが、この研究には続きがあります。研究チームはより精度の高いデータを導き出すために、持病などのイレギュラーな要素をできる限り排除した結果を導き出しました。

引用元:https://publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/reports/tamaa1/index.html

すると、どの睡眠時間でも死亡リスクには大差がなく、男性にいたっては4時間睡眠のグループがもっとも死亡リスクが低いようにも見えます。

研究チームは下記のような見解を発表しており、明確に「誰にとっても7時間の睡眠がよいのだと考える根拠はありません」と述べています。

睡眠時間が短い人や長い人が睡眠時間を7時間にすれば死亡しにくくなるのかどうかはわかりません。7時間寝ることが本当に死亡のの危険性を減らすのかどうかを調べようと思ったら、いろいろな睡眠時間の人を集めてきて、半分のグループはそのまま、半分のグループでは睡眠時間を7時間にしてもらい、長い間観察して死亡状況を調べることになります。しかし、現時点ではそこまでするほど確実に誰にとっても7時間の睡眠がよいのだと考える根拠はありません。

引用元:https://publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/reports/tamaa1/index.html

にも関わらず、報道において引用されるのは、一つ目の図と結果のみで、肝心の真の結果は伏せられたままです。

世間で常識とされている理想の睡眠時間は、実は信ぴょう性の低い実験の結果をもとにしていたり、このように恣意的に研究結果の重要な部分を省略して報道されているのが現状なのです。

 

睡眠時間に関するあなたの疑問を解消します

7時間や8時間が理想の睡眠時間という主張と共によく言われるのが、理想の睡眠時間は人によって異なるので、自分にあった長さを探すべき、というものです。

もっともらしい答えに聞こえますが、結局自分は十分に眠れているのか、の不安を解消する答えとはなっていません。いつの時間帯に寝て、何時間寝ればよく、何時に起きれば良いのか、昼型と夜型で違いはあるのか、寝だめはできるのか、などについてズバリお答えします。

結局何時間寝ればよいのか

実は万人に共通する理想の睡眠時間というものはなく、日中に眠気やだるさが出なければ、睡眠時間は何時間であろうと問題ないです。日々の生活で困っていなければ、4時間であろうと大丈夫ということです。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」にも下記のように記載があります。

日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番である

引用元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

世間では常に睡眠の長さに関心が集まりますが、実は、重要なのは睡眠時間ではなく睡眠の回数です。

非常に重要なことなのでぜひ覚えていただきたいのですが、睡眠時間は長ければ長いほど効率が悪くなります。効率というのは、簡単に言えば眠気をとる効率のことです。

よって1日1回だけ長時間寝るというのは、非常に効率の悪い睡眠で、実は動物界でこのような睡眠をとるのは人間くらいです。他の動物は、睡眠を小分けにして何回もとる、効率の良い睡眠をとっています。

日本睡眠学会の理事を務められた、東京医科大学名誉教授の井上昌次郎氏の著書『眠りを科学する』では、では次のように記されています。

動物たちはヒトのように連続して長く覚醒しつづけたり,連続して長く眠りつづけることはしません。動物たちは1日に何回も眠る「多相性睡眠」のパターンを示します。これに対し,複数の睡眠単位をつないで1日1回の「単相性睡眠」のパターンに修飾して,概日リズムの休息期に張りつけてしまったのが典型的な現代人の眠りです。(中略)つまり,ヒトの睡眠は自然のままではなく加工されたものです。

人間の方が、一度に長時間寝る、効率の悪い睡眠スタイルに変化していったということです。

つまり、一度に8時間寝るより、合計の時間は同じでも、4時間の睡眠を2回取った方が、効率の良い睡眠となります。これを多相性睡眠と言います。

少しうたた寝をして起きたら、非常に頭がスッキリしていた経験が皆さんもあると思いますが、これはまさに寝始めの効率の良さの効果です。たった数分であったとしても、効率が非常に良いので、眠気が取れやすいのです。

うたた寝のように、短い時間の仮眠のことをパワーナップと言います(厳密には15分以内の仮眠です)。

パワーナップは、眠気をとって、作業効率を向上させることができる優れもので、GoogleやNikeなど、世界の一流企業で採用されるほど効果が認められていますので、ぜひ日常の習慣に取り入れていただきたいと思います。

パワーナップの効果をより高めるための、具体的な方法はこちらをご覧ください。

これまで1,200人以上の方々に睡眠の指導をする中で、睡眠の回数を増やしていただくことで、日中の眠気やだるさをはじめとした睡眠の悩みを数々解決していますので、実績も折り紙つきです。

多相性睡眠とパワーナップをぜひ試していただければと思います。

就寝すべき時間は何時か

睡眠時間の長さに関する悩みの次に多いのが、どの時間帯に睡眠をとれば良いのか、特に就寝時刻についてです。

皆さんも一度は聞いたことがある「22時〜2時の間は睡眠にとってのゴールデンタイムで、疲労回復や美容に効果がある成長ホルモンが分泌される」という通説は、実は誤りで、田ヶ谷らの研究によって、何時に寝ようが、成長ホルモンは分泌されることが分かっています。

(GHサージは)睡眠の最初にみられるピークが1日の中で最大であることは、1960年代より報告されていた。1日の中で睡眠を移動させてもGHサージは常に睡眠の最初に出現する。
※GH=下垂体前葉からの成長ホルモン

引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/46/2/46_2_169/_pdf

つまり、就寝する時間帯は特に気にせず、生活スタイルに合わせて決めて問題ありません。

寝だめはできるのか

寝だめという言葉が日本語に定着しているのは、多くの人が貯金もしくは借金を返済するようなイメージで、平日の短い睡眠時間を長い睡眠時間で補填できると思っている証拠だと思いますが、結論としては、寝だめはやめた方が良いです。

理由は2つあり、1つは前述の通り、睡眠は長ければ長いほど、効率が悪くなっていくからです。

日頃の睡眠時間が短くて辛いと感じる場合には、寝だめをするのではなく、多相性睡眠を活用して、パワーナップを1日に2〜3回とったり、夜の睡眠時間を半分にして残り半分を昼寝にするなど、睡眠の回数を増やすようにすると、眠さやだるさを解消しやすくなります。

2つ目の理由は、睡眠中は血圧や心拍数が低下して血流が悪くなるためです。睡眠時間が長くなるほど、身体はどんどん動きづらくなり、長時間寝たのにも関わらず眠気が起こりやすくなります。

夜型だと睡眠時間は変わるのか

日が沈んでからの方が心身とも活発になる夜型の人は、睡眠の悩みを持ちやすい場合がありますが、昼型でも夜型でも睡眠時間が変わることはありませんし、意図的に変える必要もありません。

眠気の原因となる睡眠物質のたまり方は、時間帯によって変わるものではありません。

昼型の人にとっての夜の時間帯と同様に、夜型の人は日中に眠気を感じやすいことがあります。

退屈な環境や、単調な作業をする時は眠くなりやすいので、なるべく身体を動かすような行動をする、人と話すなど脳を刺激しやすいことをするのがオススメです。

決まった時間帯に眠気を感じる場合には、あらかじめパワーナップをとっておくか、眠気をよく感じる時間帯の1時間ほど前から普段と行動を変えると良いでしょう。

土日に長く寝るのは大丈夫なのか

土日に仕事や用事がない場合、眠気に任せて長時間寝たくなる気持ちはわかりますが、何度もお伝えしている通り、長時間の睡眠はメリットが少なく、デメリットの方が多いです。

それを踏まえてもなお、長く寝たい場合には、起床時間は平日と同じにしたうえで、前夜に早く寝ましょう。

土日の前夜は飲み会などで就寝時刻が遅くなる方も多いでしょうから、その場合は遅い時間に寝たとしても、起床時刻は平日と同じにすることを心がけ、多相性睡眠を活用して、日中にもう一度寝ることをおすすめします。

就寝時刻は特に指定はありませんでしたが、起床時刻は固定することをお勧めしています。

毎日同じ時刻に起きることで、強固な習慣ができあがり、起床が楽になってスッキリ起きやすくなるからです。

もう1つ重要なこととして、長く寝る場合には、土日のどちらか一方のみにしましょう。

2日連続で長時間の睡眠をとると、身体が慣れてしまい、月曜以降の短い睡眠が非常につらく感じてしまいます。

土日の睡眠は、長く寝る場合にはどちらか一方だけ、そして起床時刻は平日と同じ、この2点を守っていただければ良いと思います。

睡眠不足と睡眠負債について

NHKのテレビ番組「睡眠負債が危ない」が放送されて以来、睡眠負債という言葉は流行語大賞のトップ10に選ばれるほど、世間に認知されました。

一方で、理想の睡眠時間の話と同様に、根拠や詳細についてよくわからないまま、睡眠負債という言葉やイメージだけが一人歩きして、多くの人を不安に陥れている面もあります。

この章では睡眠負債について正しく理解いただき、多くの誤解を解いていきたいと思います。

睡眠負債とは何か

睡眠負債とは「わずかな睡眠不足でも、常態化すると不足した分が負債のように積み重なっていく」という意味を含んだ言葉で、睡眠負債が大きくなると、心身ともに重大な影響を及ぼすと、医者や専門家によって提唱されています。

何時間寝れば睡眠不足じゃなくなるの?

睡眠負債とは、睡眠不足の積み重ねとのことでしたが、そもそも何時間寝れば睡眠不足にならないのか、明確に答えられる人はこの世にはいません。

専門家が口々に言うのは、「人によって理想の睡眠時間は違う」「睡眠は質も大切」ということで、何時間寝れば睡眠不足にならないのかは定義されていませんし、定義することは不可能です。

7時間や8時間と思われる人もいるかもしれませんが、これらの数字に信頼できる根拠がないのは、すでに説明した通りです。

拙書「睡眠の常識はウソだらけ」で睡眠不足の私なりの定義を記しているので、引用します。

睡眠不足とは、睡眠時間の不足ではなく、眠気の原因となる睡眠物質が、除去しきれていない状態。

つまり、睡眠時間が何時間であろうと、この睡眠物質を除去できていれば、睡眠不足ではないと言えます。

睡眠物質を効率よく除去するためには、一度に長時間寝るのではなく、パワーナップを活用したり、睡眠を何度かに分ける多相性睡眠がおすすめであることは、すでにお伝えしました。

睡眠負債が溜まると何が起こる?

睡眠不足が積み重なり、睡眠負債が溜まると、心身にダメージが及ぶと言われていますが、これは睡眠時間が短いと、心身が十分に回復できないのが原因とされています。皆さんもそのようなイメージをお持ちかもしれません。

多くの人が睡眠には特別な疲労回復効果があると思いがちなのですが、実はそれは間違いで、睡眠でしか分泌されないホルモンや物質はありません。

例えば、疲労回復に貢献する成長ホルモンが睡眠時に分泌されることは非常に有名ですが、これは起きている間、特に運動時も分泌されるもので、特別なものではありません。

皆さんが起きたら身体の疲れがとれるように感じるのは、睡眠の疲労回復効果ではなく、横たわることで、足腰への負担がなくなるのと、血流が促進されるためです。
有名スポーツトレーナーの山本義徳さんもYoutubeにてそのことを語っていますのでご覧ください。

ちなみに動画中で山本先生がおっしゃっている”1日30分睡眠のクライアント”は私のことを指しています。

横たわることにメリットがある一方で、すでにお話した通り、睡眠中は血流が悪くなりますし、血中の酸素濃度も起きている時に比べて95%以下になりますので、更に疲労回復の面では不利に働きます。

日常的に疲れが溜まっているスポーツ選手の間では、アクティブレストという、軽く身体を動かすことで、血流を促進させて、素早く疲れを取るための手法が当たり前のように取られています。いつもより多く睡眠をとるのではなく、逆に身体を動かしているのです。

また、睡眠は脳を回復させると言いますが、皆さんもご経験があるように、数分のうたた寝でも頭はスッキリして作業がはかどりますし、長時間寝た後に頭がぼーっとすることもあります。

脳の回復度合いは、睡眠の長さとは必ずしも関係ないことがわかります。

そもそも疲れをとるために睡眠があるなら、疲れない人は睡眠をあまりとらなくてもよいことになりますが、世の中を見渡せば起きている現象は逆で、家に一日中いて何もせず、頭を使わずにぼーっとする人ほど長く寝て、よく活動する経営者の方々は、睡眠時間が短くても毎日健康に過ごしている傾向にあります。

睡眠負債の正体

睡眠負債の正体は何者でもなく、はっきり言えば、睡眠負債なんてものはない、ということになります。

拙書「睡眠の常識はウソだらけ」でも紹介しましたが、睡眠負債という、人々を不安に陥れることができる存在をつくりあげることで、睡眠に関する診察を行う医者が潤い、睡眠薬や寝具などをたくさん売ることができます。

巨大な産業がお金を生むために、メディアを使って、真実と言えない情報を世間に広めているということです。

私たちはメディア等で知り得る情報に惑わされることないように、正しい知識を持っておく必要があるのです。

睡眠時間と勉強や仕事の集中力の関係性

睡眠時間は何時間でもよいと申し上げましたが、メディアでは、6時間以下の睡眠が続くと、脳の働きが低下するなどという研究結果も盛んに報じられていますし、あまり寝られないと勉強や仕事に大きな支障をきたすのでは、と心配になる方も多いでしょう。

この章では、睡眠時間と集中力の関係について詳しくご紹介いたします。

有名な実験の本当の結論

ペンシルベニア大学のVanらによる実験で、6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜したのとほぼ同じ状態になるという結論が出しました。

このセンセーショナルな表現も相まって、世間に広く知れ渡りましたが、この研究もメディアによって捻じ曲げられて報じれているので、真実をご紹介します。

この実験において忘れてはいけない大前提をお伝えします。

それは、実験に参加した被験者がいつも7時間や8時間またはそれ以上寝ている人だったということです。元々6時間睡眠の人ではありません。細かいようですが非常に重要で注意すべき点です。

つまり、実験のテーマは「いつもの睡眠時間より短い状態が続くと脳のパフォーマンスが落ちるのか」というもので、結論は「いつも7時間や8時間以上寝ている人が2週間の間、6時間睡眠を続けると、2晩徹夜したのと同じ状態になる」となります。

メディアではあたかも、普段から6時間やそれ以下の睡眠時間の人についても、脳の働きが落ちるかのように報じられますが、それは誤りです。前述したように、もともと6時間やそれ以下で生活していようと、眠気やだるさを感じていない人であれば、脳の心配をする必要はありません。

実験の結論の通り、確かにいつもの睡眠時間より寝られないと、皆さんもご経験がある通り、寝不足気味になって脳の働きが落ちる可能性があるのは事実ですが、その際にはパワーナップを活用してみてください。

Gillbergらの研究によって、いつもより睡眠時間が短くても、パワーナップを活用することで、脳のパフォーマンスは元に戻ることが分かっています。

ペンシルベニア大学の実験では、いつも7〜8時間以上寝ていた人たちは、実験の期間、6時間睡眠以外の睡眠を取ることは許されなかったので、当然パワーナップもとっていません。それは脳のパフォーマンスが落ちても仕方がないと言えます。

睡眠時間が長いと集中力が低下する

睡眠時間がいつもより短くなった時の影響をご紹介しましたが、睡眠は長いに越したことがないのかと言えば、実はそうではなく集中力に悪影響を及ぼします。

脳が正常に機能するためには十分な血流が必要となりますが、睡眠中は脳の血流が低下しますので、この時間が長いことが脳にとって好ましくありません。

皆さんも学生の時に聞いたことがあるかもしれませんが、「起床後は3時間経過しないと頭が働かないから、試験があるときは、3時間前には起きるように」と言われたりします。

この寝起きに頭がはたらかない感覚は、睡眠を長くとることでより発生しやすくなります。

睡眠時間と美容・アンチエイジングの関係

睡眠時間は美容やアンチエイジングにも大きな影響を及ぼしていると思われています。実際、あまり睡眠をとれない日々が続くと、肌荒れなどを気にすることがあると思いますが、睡眠と美容にはどのような関係があるのか、正しく理解していただきたいと思います。

肌荒れを引き起こす理由

日本睡眠科学研究所によれば、肌荒れはターンオーバー(新陳代謝)の乱れが原因で、これには成長ホルモンが関係しているとのことです。

美の専門家を名乗る方々は、睡眠時間を十分に確保して成長ホルモンをたくさん分泌させることを推奨していますが、これは適切なアドバイスではありません。

なぜなら睡眠中に分泌させる成長ホルモンのほとんどは、就寝後90分以内に分泌されるからで、睡眠時間が短くなってしまったとしても問題はないのです。

つまり普段7時間寝ている人が、3時間や4時間しか寝られなかったとしても、成長ホルモンの面では肌に悪影響はありません。

Takaradaらの研究によって、軽めの運動でも成長ホルモンは分泌されることが分かっていますので、わざわざ長く寝ようとするのではなく、運動をすることが肌にとっては大切といえます。

また睡眠時間は長くなればなるほど、肌にとってデメリットが多いです。

例えば、肌の潤いのために美容液を塗ってから寝る方が多いと思いますが、長く寝れば寝るほど、肌にとって大切なはずの水分を取れない時間が長くなり、さらに水分は汗として出ていきますので、どんどん身体が干からびてしまいます。

普段起きている時に、7時間や8時間のあいだ、何も飲まないなんてことはしないのに、睡眠中は平気でそれが行われ、むしろ推奨されているのは、非常に不思議です。水分だけでなく、ビタミンCやコラーゲンなど、肌にとって大切な栄養補給も睡眠中はもちろんできません。

さらにダメ押しのデメリットですが、睡眠中は汗をかいていますから、枕シーツに汗が染み込んで雑菌が繁殖しています。寝れば寝るほど、清潔でない枕シーツに肌を長時間触れさせることになりますので、当然肌にはよくありません。

これまでの話は理解できるけども、しかし経験的に睡眠時間が短いときの方が、肌荒れが起きていたという方が多いと思いますので、この謎を解き明かします。

美容・アンチエイジングの秘訣

美容の秘訣は、食事・生活習慣・肌の手入れ、と数々の美容系の雑誌やウェブサイトで言われています。

ここで皆さんに思い返していただきたいのですが、睡眠時間が短かった日に、これらの美容の秘訣を徹底して取り組めていたでしょうか。

おそらく仕事が忙しかったり、朝まで飲んだりという具合に、食生活が荒れて、ろくに肌の手入れが普段より甘かったのではないでしょうか。これが肌荒れの何よりの原因です。

7時間や8時間寝ようと、食事や肌の手入れがおろそかでは、肌荒れになるでしょうし、3時間しか寝ていなくても、水分や栄養を摂取し、運動や肌の手入れを十分に行っていれば、美肌は保てるのです。

睡眠時間と寿命の関係性

7時間睡眠がもっとも死亡リスクが低いという統計データは、誤った報道による誤解ということをご紹介しましたが、睡眠時間が短いと、具体的に健康や寿命にどういう影響が出るのかご紹介します。

睡眠時間が短い象が、長く寝た象に比べて3倍長生きした理由

動物園で飼育されている動物は、野生に生息する動物たちに比べて睡眠時間が長いことが分かっています。それは天敵に襲われることを警戒する必要がないので、安心して長く寝られるという理由と、食糧を探し回る必要がないので、その分時間が余って寝るという理由によるものです。

安全な空間で、十分な食糧を食べられて、野生で暮らすより長く寝る生活と聞くと、さぞ健康的で長生きするのだろうと思われるかもしれません。

しかし、科学誌サイエンスにも掲載された、英王立動物虐待防止協会が行った調査によれば、野生の象の寿命は、動物園で飼育される象に比べて、平均寿命がなんと3倍になったそうです。よく寝ていた動物園の象の方が早死にしているのです。

その原因について調査チームは以下のように考察しています。

死亡原因の多くは肥満と関連があると考えられている。というのも、栄養たっぷりの食事を与えられ、狭いオリの中でほとんど運動できないからだ。また、動物園から動物園へ移動させられたり、母親と離されたりすることから来る、過度のストレスにも原因があるという。

肥満とストレスによって早死にしたとのことです。飽食の時代にしてストレス社会の中に生きる現代の日本人にとって決して他人事ではない調査結果ではないでしょうか。

睡眠時間を無理に確保して、運動不足になったり、友人、家族との交流、趣味の時間が削られてストレスを溜めてしまっては逆に健康に良くないということです。

睡眠時間と病気へのかかりやすさの関係性

日本人の死因トップ3は、がん、心疾患、脳血管疾患ですので、 寿命の長短を決めるのは、これらの病気にかかりやすいかどうかと言えます。

ここでは死因の第1位である、がんへのかかりやすさと睡眠の関係について考えてみます。

がんの発生要因は、国立がん研究センターのHPを見ると確認できまして、がんの原因となる要素が9項目(喫煙、飲酒、食物・栄養、身体活動、体格、感染、化学物質、生殖要因)挙げられているが、ここに睡眠時間は含まれていません。

つまり、がんと睡眠は直接関わりがあるわけではないということです。

がんの予防方法については、主に5つ(喫煙する、食生活を見直す、節酒する、身体を動かす、適性体重を維持する)挙げられています。

後半の2つに注目してください。運動をせずに太っていたらダメだということがわかりますね。動物園で飼育されている象は運動不足による肥満が原因で寿命を短くしたのではという考察がありましたが、人間もやはり無関係ではありません。

睡眠ばかりとって運動をしないでいては、がんのリスクが高まるという事ですし、睡眠時間が短かったとしても、しっかり運動をしていて理想的な体型を保っていれば、がんの予防はできていることになります。

がんだけでなく、全ての病気に言える事ですが、睡眠中は体温が平均1度下がり、免疫力が約37%低下すると言われていますので、起きている時に比べて病気にかかりやすくなります。

「そんなところで寝ていたら風邪を引くよ」という言い回しを聞いたことがあると思いますが、起きているでのはなく、”寝ている”からこそ風邪をひくのです。

睡眠時間が長すぎると、免疫力が落ちて身体が無防備な状態がそれだけ長く続きますので、寝すぎるのは考えものです。

世界中のいろんな人の睡眠時間を比較してみた

日本人の平均睡眠時間は年々短くなっており、世界的にもトップレベルで短いとネガティブに報道されることが多いです。

では健康な国の人たちは何時間寝ているのか?仕事ができる国の人たちはどのくらい寝ているのか?

いったい何時間寝れば、仕事や勉強を効率よくできるのか、また幸福になれるのかを、世界に目を向けて、他国と比較します。

また、歴史上の偉人や現代の成功者が、何時間寝ているのかも紹介します。

日本の平均睡眠時間、世界各国の平均睡眠時間

多くの方がご存知のように、日本は確かに世界トップレベルで睡眠時間が短いです。

では、睡眠時間は果たして健康に影響を及ぼすのか、平均睡眠時間と寿命に相関関係があるか見てみましょう。

図から分かる通り、ダントツで睡眠時間が短い日本が、他の国より寿命が長いです。

また、全体的な傾向としても、平均睡眠時間が短いほど、むしろ寿命が長くなっているようにも見えます。

続いて、睡眠時間は、仕事の効率に影響を及ぼすのでしょうか。効率を表す指標として、一人当たりのGDPを用いて、睡眠時間との比較をしてみましょう。

世界を対象とした2018年の一人当たりの名目GDPによると、日本:26位 韓国:30位 デンマーク:10位 オーストリア:14位 ドイツ:18位  オランダ:13位  イギリス:22位  フィンランド:15位 オーストラリア:11位 フランス:21位 イタリア:27位 ポーランド:57位 スペイン:33位 カナダ:20位 アメリカ:9位 トルコ:71位という順位となっています。

日本がトップとはいきませんが、睡眠時間が短いから一人当たりのGDPも少ないとは言えません。このグラフはヨーロッパの先進国と主に比較しているので、ヨーロッパ以外の地域と比較すれば、より睡眠時間が仕事の生産性に影響していないことが分かるはずです。

睡眠時間と勉強の関係についても見てみましょう。OECDによる生徒の学習到達度調査より数学的リテラシーの結果と睡眠時間の比較をしてみます。

OECDによる生徒の学習到達度調査の内容を抜粋すると、以下のとおりです。

日本:5位 韓国:7位 デンマーク:12位 オーストリア:20位 ドイツ:16位 オランダ:11位 イギリス:27位 フィンランド:13位 オーストラリア:25位 フランス:26位 イタリア:30位 ポーランド:17位 スペイン:32位 カナダ:10位 アメリカ:40位 トルコ:49位

睡眠時間が短い方が、数学的リテラシーの順位が高いようにも見えます。

最後に、睡眠時間が短いことは果たして不幸に繋がるのか、世界の幸福レポート2019を見てみた結果です。

日本:58位 韓国:54位 デンマーク:2位 オーストリア:10位 ドイツ:17位  オランダ:5位  イギリス:15位  フィンランド:1位
オーストラリア:11位 フランス:24位 イタリア:36位 ポーランド:40位 スペイン:30位 カナダ:9位 アメリカ:19位 トルコ:79位

日本の順位は決して高くはないですが、幸福度の順位も睡眠時間と関係があるとは言えません。

睡眠時間の長い偉人たち

次に偉人や成功者たちの睡眠時間を見ることで、我々はいったいどれくらい寝ればよいのか、参考にしてみましょう。

アインシュタイン ノーベル物理学賞 相対性理論

睡眠時間:8時間
(出典:https://www.cnbc.com/2017/04/21/why-jeff-bezos-makes-getting-8-hours-of-sleep-a-top-priority.html)

ジェフベゾス Amazon.com の共同創設者・CEO

睡眠時間:8時間
(出典:https://www.cnbc.com/2017/04/21/why-jeff-bezos-makes-getting-8-hours-of-sleep-a-top-priority.html)

ティムクック アップルの最高経営責任者

睡眠時間:7時間
(出典:https://www.businessinsider.com/apple-ceo-tim-cooks-daily-routine-2018-11)

睡眠時間の短い偉人たち

睡眠時間が短い人にも、偉人や成功者は当然いますのでご紹介します。

(出典:https://www.businessinsider.com/thomas-edison-winston-churchill-sleeping-habits-2015-2)

モーツァルト 作曲家

睡眠時間:5時間

イーロン・マスク テスラの共同設立者およびCEO

睡眠時間:2時間

エジソン 発明家

睡眠時間:3時間

その他にも多数の有名人、芸能人のショートスリーパーがいらっしゃいますので、興味のある方はぜひこちらをご覧ください。

ショートスリーパーの有名人と芸能人が多い理由とショートスリーパーになるコツ

偉人や成功者の睡眠から分かった結論

様々な偉人や成功者の睡眠を調べた結果、アインシュタインやエジソン、モーツァルトといった天才的な頭脳の持ち主の間で睡眠時間は大きく別れました。

また、同じIT系企業のトップでも、ショートスリーパー®︎がいたり、8時間寝ている人もいたりと、人それぞれでした。

ただし、一つ想像されるのは、ジェフベゾスのように現在は睡眠時間が長かったとしても、この地位に上り詰めるまでには、きっと睡眠時間が短い毎日を過ごして、周囲に負けないくらい努力をしてきたことでしょう。

日本と世界各国の睡眠時間の比較や、偉人たちの睡眠を見ることで、睡眠時間と、仕事や勉強の効率、幸福度、社会的に成功するかどうかは、まったくと言っていいほど、関係なさそうなことがわかりました。

睡眠に悩まなくなる睡眠メソッド

睡眠時間についてあらゆる観点からの考察をご紹介しました。

結論として睡眠時間は何時間でもよく、仮に短かったとしても睡眠負債や仕事での集中力や美容、健康などへの影響は特になく、むしろ長く寝れば寝るほど悪影響であることもお伝えしました。

睡眠時間で悩む必要はありませんが、それだけで全てが解決するわけではなく、なかなか寝付けなかったり、スッキリ起きられない、日中の眠気がひどい、といった悩みを抱えてる方は非常に多いと思います。

生きている限り毎日とる睡眠で悩むというのは非常につらいことです。しかし逆に言えば、睡眠に関する悩みをなくすことができれば、人生における幸福度が大きく上がることを意味しています。

寝つきも寝起きも、適切な方法を用いることで、すぐに改善できますし、眠気は睡眠時間以外が原因で発生するものが多々あるので、眠気についての知識を学ぶことで、眠くなる回数が格段に減り、日々のパフォーマンスを上げることができます。

私はショートスリーパーを育成するカリキュラムを提供する中で、今までに1,200人以上の方を指導してきた実績があり、睡眠時間を短くするだけでなく、起床や入眠、日中の眠気の悩みを解決してきました。

その経験から、正しい方法と知識を学べば、誰もが睡眠で悩むことはなくなると断言できます。

睡眠で悩んでいる方は、ぜひ無料のメールマガジンを読んで、弊社の睡眠メソッドを学んでみてください。

文章を読むより直接話しを聞きたいという方は、睡眠メソッドの説明会にお越しいただければ、丁寧に分かりやすくお話させていただきますし、質問にも全力でお答えいたします。

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